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最終更新日 2019年05月23日

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フードサービス業界の労務相談
「働いてあげている」「働かせてあげている」はトラブルのもと!
現代の飲食業界において、健全な経営状態を保つためには「健全な労働環境の整備」が必要です。しかしながら中小企業、個人自営業が全体の9割以上を占める飲食業界は他のサービス業界同様、健全とは言い難い労働環境により雇用者と従業員間のトラブルが多い業界です。料理業界はそもそも「職人の世界」である事からいわゆる「サラリーマン的」な勤務意識がなく、【働く=奉公=修業→独り立ち】という図式が成立してきた世界ですが、「外食産業」「フードビジネス業界」の名のもと、メジャー業界として確立するには「正しい労務知識」は無視できません。このコーナーでは飲食業界の労働者・雇用者の両者の視点で正しい労務知識を紹介し、雇用者への啓発・提案、そして労働者への権利・責任などを実例をもとに理解していただき、両者にとってトラブルのない健全で分かち合える職場構築のサポートを目指しています。
今号のご相談内容

今号のご相談内容

「懲戒委員会を開催せずに行われた懲戒処分は有効か」

質問1

Q.

  無断欠勤を何度かしてしまい、先日、懲戒処分を受けました。ところで、就業規則には、「会社は、懲戒委員会の諮問を経て、懲戒処分を行う」という規定があります。しかし、私のときにはそのような委員会が開催されたわけではなく、社長の独断で決定したようです。問題はないのでしょうか。 
【26才 男性】
答え

A.

 就業規則に懲戒委員会に関する規定があるのに、それに従わずになされた懲戒処分は、法律的に無効となる可能性があります。
 使用者(お店の側)が労働者を懲戒する権利は、企業秩序を維持するために持っている権利とされています。ただし、この懲戒権を実際に行使するためには、あらかじめ就業規則に、どんな行為をしたときに(懲戒の事由)、どんな種類の懲戒(減給や出勤停止等、懲戒の種別)が行われるかを定めておき、なおかつ事業所の労働者に周知させておかなければなりません。逆に言えば、就業規則に定められていない行為に対して懲戒をすることはできませんし、定められていない種類の懲戒をすることはできません。また、そもそも就業規則のない事業所では、懲戒処分そのものができないとも言えます。
 次に、いくら就業規則に懲戒規定が定められていて懲戒権を行使できるとしても、その行使のしかたが、権利の濫用にあたる場合には、その懲戒処分は無効となります(労働契約法15条)。具体的には、同じ行為をしたAさんとBさんには同じ処分を行うべきであること(平等取扱の原則)、やった行為の重さと処分の重さに釣り合いが取れていること(処分相当性の原則)、弁明の機会を与えるなど手続が適正であること、等が懲戒権の濫用であるか否かの判断基準となります。
 さらに、企業内の懲戒処分は、刑罰法規に似ていることから、「罪刑法定主義」の原則が当てはまるとも考えられています。具体的には、懲戒規定が定められる前の行為について処分をすることはできない(不遡及の原則)、同じ事由について二重の処分をすることはできない(一事不再理の原則)ということです。
 さて、懲戒処分が法的に有効となるための要件は以上のとおりですが、その中の「手続きが適正であること」に注目してください。就業規則に、懲戒処分にあたり「労働組合との協議の上で、」とか「懲戒委員会(懲罰委員会、賞罰委員会等の場合も)を開催して、」といった手続規定が定められていることがあります。こういった手続規定に従わずに行われた懲戒処分は、原則として無効となります。
 「懲戒委員会を開催する」という就業規則の手続規定に違反して行われた懲戒処分について、無効と判断された裁判例が複数あります。
 ただ、裁判例の中には、同様の手続規定に違反したことだけをもって、懲戒処分を無効としなかったものもあります。
 ご質問のケースでは、「懲戒委員会の諮問を経て、懲戒処分を行う」という規定がありながら、それを履行せずに社長の独断で懲戒処分を行ったのだとすると、その懲戒処分は無効となる可能性が高いと考えられます。
飲食店オーナーの方へ

飲食店オーナーの方へ

 大企業の就業規則を、何も考えずにそのまま流用していると、「懲戒委員会」の規定が入ったままのことがよくあります。しかし、中小規模の企業で、そのような手続きを経ることは現実的には難しいでしょう。
 懲戒委員会の設置は、法律上義務づけられているわけではありません。お店側にとって懲戒処分のハードルが高くなる、このような規定は最初から定めるべきではないでしょう。
飲食店オーナー・経営者のみなさまへ
飲食業に強い社労士です!
久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

業務案内:給与計算、労働・社会保険の手続き代行、就業規則の診断・作成 店長・管理職対象労務研修の実施、人事・労務相談

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