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フードサービス業界の労務相談
「働いてあげている」「働かせてあげている」はトラブルのもと!
現代の飲食業界において、健全な経営状態を保つためには「健全な労働環境の整備」が必要です。しかしながら中小企業、個人自営業が全体の9割以上を占める飲食業界は他のサービス業界同様、健全とは言い難い労働環境により雇用者と従業員間のトラブルが多い業界です。料理業界はそもそも「職人の世界」である事からいわゆる「サラリーマン的」な勤務意識がなく、【働く=奉公=修業→独り立ち】という図式が成立してきた世界ですが、「外食産業」「フードビジネス業界」の名のもと、メジャー業界として確立するには「正しい労務知識」は無視できません。このコーナーでは飲食業界の労働者・雇用者の両者の視点で正しい労務知識を紹介し、雇用者への啓発・提案、そして労働者への権利・責任などを実例をもとに理解していただき、両者にとってトラブルのない健全で分かち合える職場構築のサポートを目指しています。
今回のご相談内容

今回のご相談内容

「エリア長いう地位を特定して中途採用された場合、能力不足としての解雇は認められやすいのか」

質問1

Q.

 前職でのエリア長としての実績を評価され、今の会社にもエリア長に就く約束で採用されました。担当エリアの売上を前年比10%アップさせることを至上命令とされ、年収1千万円という待遇でした。ところが、入社から1年がたっても業績を向上させることができず、「能力不足」を理由として解雇されました。解雇とは、そんな簡単にできるものなのでしょうか。
答え

A.

 過去の職歴にもとづく能力を発揮することを期待され、地位を特定して中途採用された者については、その地位に要求される能力や適格性が判断基準となるため、使用者にとって解雇のハードルは下がることがあります。
 解雇は、「客観的に合理的な理由があること」「社会通念上相当であること」の要件を満たさなければ、無効となります(労働契約法16条)。もう少し具体的に言うと、「解雇事由」に該当することと、「解雇を回避する努力はしたのか」について、厳しく判断されます。
 例えば、「能力不足」というのは、解雇事由になり得ます。ただし、能力不足という烙印を押されたからといってすぐに解雇が許されるわけではなく、労働者の解雇を回避するためにどれだけ使用者が努力したのかがみられます。具体的には、改善の機会として、指導や教育をキチンとしたのか、それでも改善の見込みがなかったのか、それなら、配置転換、職種変更、降格等をしてでも雇用を維持することはできなかったのか、といった観点から判断されます。それだけに、解雇のパターンの中でも、「能力不足」を理由とする解雇は一般的に難しいとされています。
 では、過去の職歴により一定の能力を発揮することを期待されて、「人事部長」や「営業部長」といった地位を特定されて中途採用されたケースではどうでしょうか。過去の裁判例では、長期雇用を前提とする新卒採用とは異なり、一定の能力を有することを期待して地位を特定して採用されたものの、雇用時に予定された能力を有していないことが明らかとなった場合には解雇もやむなしとして、解雇を有効としたものがいくつかあります(フォード自動車(日本)事件・東京高判昭59・3・30、持田製薬事件・東京地決昭62・8・24、ヒロセ電機事件・東京地判平14・10・22)。
 つまり、教育を施したり配置転換をしたりしてまで解雇回避努力を尽くさなければならないのは、長期雇用を前提とした新卒者についてのことであり、地位特定者として中途採用された者については、期待された能力を発揮できない場合には、解雇が有効と認められやすくなるということです。
 ご質問のケースも、エリア長という職務上の地位を特定し、その地位に相応した能力を発揮することを期待され、それにふさわしい待遇で採用された、「地位特定者」として採用されたと言えるでしょう。(なお、「店長」レベルの役職では、地位特定者には該当しないと考えられます)したがって、能力不足としての解雇が、一般の労働者より広い範囲で認められやすくなります。
飲食店オーナーの方へ

飲食店オーナーの方へ

 地位特定者として採用する場合には、採用時に、どのような地位に就くことを特定しておくとともに、どのような能力があることを前提に、どのような成果をあげることまで契約内容にしておくことが重要となります。いざ解雇せざるを得なくなった際には、約束していた成果を達成できなかったという点が明確になるからです。
前回までのご相談

前回までのご相談内容

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各種社会保険について

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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